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コロナ禍で加速する不動産投資の光と影

2023.02.09公開

激増するオンライン不動産投資セミナー

コロナ禍の逆風にあって、不動産投資を始める人が増えているという。オンラインの投資セミナーはどこも活況で、開催の数はコロナ以前の倍に増えている。「誰でもすぐできる不動産投資」「初心者でも儲かる投資戦術」などと銘打った、ややマユツバものもあるが、主催者の中には、この18ヶ月で7,000人以上が受講したと語る人もいた。

「どんな人達が聞いているのですか?」。セミナーの関係者に尋ねると、20代から30代の働き始めたばかりの若者や公務員が多いと言う。先行きへの不安を訴えているのだ。

講座を開けばたちまち申し込みが殺到し、ある不動産販売会社の社長は、「ネット上で1つ物件情報を公開すると、30人以上から買い注文が入り、画面の向こう側で待っていたのではないかと思うほどです」と語った。賃貸経営は安定した不労所得だと安易に考える向きがあるのだろう。

新しい個人投資家たちの登場

中には、新たな投資家の存在も際立つ。

「同僚が次々不動産投資を始めたということで興味を持った」と語るのは、LCC(格安航空会社)のパイロットだ。フライト数が激減し年収が2割減となった今、色々な不動産会社に話を聞きに行ったりセミナーを受講したりしているという。

年収の高いパイロットは、一般的なサラリーマンに比べれば融資が出やすく、不動産会社からすると良いお客さんになっていると販売会社は話す。コロナが新しい個人投資家の登場を促している。

コロナが問う挑戦と継続の意義

 一方、われわれが日々取材する賃貸オーナーたちとの会話では、賃貸経営への不安や心配を語る場面が増えていることに気づく。

「毎年4月になれば近隣の大学の学生さんが入居してくれていたけれど、今年は問い合わせがない。どうなってしまうのだろうか」

「一気に3室空いてしまってどうしようか悩んでいる。テレワーク部屋にして同じ物件の入居者に時間貸しをしようかと悩んでいる」

「消毒や感染防止の対策はどこまでオーナーの責任ですべきなのか、判断が難しい」

賃貸経営は誰にでも簡単に手を出せる事業だ。しかしながら、継続してやり続けていくことが難しいのだと改めて気づかされる。

しかし、誰にでも最初の一歩があったはずだ。

コロナで不動産投資や賃貸経営に関心を持つ人が増えたことは悪いことではないはずだ。挑戦と同時に、事業を継続している先人たちの苦労や不安に真摯に耳を傾けることも大事だ。希望を持ちつつも、その先にある失敗を予測する、そういった慎重な行動が問われているのかもしれない。

※本記事は「武蔵TIMES 令和3年/4月号 vol.084」(発行:武蔵コーポレーション)に掲載された「吉松こころの不動産最前線」に加筆修正を加えたものです。