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【Vol.1】吉松こころの Go There,Be There「都落ち、今は?」

2023.03.10公開

<著者プロフィール>
暮らしジャーナリスト・吉松こころ
1977年鹿児島県伊佐市(旧大口市)生まれ。 全国賃貸住宅新聞社に勤務。取締役を経て、2015年に独立。 不動産業界向けのミニ通信社、株式会社HelloNewsを立ち上げ、不動産・建築業界で生きる人々を取材している。

都落ち、今は?

子育て経験のない私にとって、目から鱗のような話を聞いた。

来年地方の国立大学を目指して勉強中の娘さんを持つ父親の話だった。父親は不動産業を営み、親子は東京の文京区に住んでいる。

「高2の娘が真剣に地方に進学したいと言っています。受験者が150万人いた、われわれ世代と違い、娘世代は100万人。30%も人数が減っているなら、競争率が高い地方の有名国立も頑張れば狙えるんです」

なるほど、「大学全入時代」というのは聞いたことがあるが、地方から東京に出ていくケースばかりを考えていた。が、逆もまたあるということか。一昔前は「都落ち」などと言われた言葉も、Z世代では死語になっている。

「企業や大学でも地方創生がキーワードだけど、学生レベルからそういうことが始まっていくのも。東京でぬくぬくと育った子供たちに地方で鍛えられてきてほしい」と、この父親は語る。

同時に、現実的な話として、親の本音も教えてくれた。

「無理して東京や神奈川の国公立を受験して落ちて、滑り止めで、私立に行って、ワンルーム家賃7〜8万円プラス学費仕送りしてとかなると、正直、我が家では地獄を見そうです」

仮に地方であれば、賃貸でも家賃や生活費は半分程度で済むし、場合によっては安い空き家の戸建住宅を買って直す、という手もあると、話す。卒業後はそのまま賃貸にしてもいい。子供の家賃を払いながら、4年後の賃貸経営を夢見ることができたら親もやりがいがある、と語る。

なるほど、これは全くない目線だった。東京から子供たちが地方を目指せば、賃貸市場だって活性化するはずだ。

そんな話をしていたら、全く違う東京の大家さんからこんなメールが来た。

「昨日、駒沢大学駅そばの世田谷アパート検討で入居者チェックすると今の日本が見えました。10戸中8戸で若い22歳〜31歳の連帯保証人の欄に書かれてる親の属性が地方が全てで1957年から1973年で年収200万円〜430万円でした。こんなんで皆んな頑張って子供を東京に送りだしてたらお金無いです」(原文ママ)

私も東京に死ぬほど憧れて上京した身だ。1年目は、賃貸を借りるお金がないと言われ、親戚の家に預けられた。大学には片道2時間かけて通学した。2年目から念願の一人暮らしをするようになったが、その間実家の家計は火の車だったと後で聞いた。弟二人は、進学を諦めた。

地方に残る。地方で働く。地方で頑張る。地方に行く。地方で学ぶ。選択肢は広がっている。人が増えれば不動産は動く。大学と一緒になって、県外から学生を呼ぶと言った動きを不動産業界はしてもいいかもしれない。

そんな成功事例を探し、取材して、ユーミーサロンで紹介したいと思う。

(吉松こころ)