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【Vol.5】吉松こころの Go There,Be There「これからの時代は、角部屋より中部屋が人気になる!?」

2023.06.07公開

 

<著者プロフィール>
暮らしジャーナリスト・吉松こころ
1977年鹿児島県伊佐市(旧大口市)生まれ。 全国賃貸住宅新聞社に勤務。取締役を経て、2015年に独立。 不動産業界向けのミニ通信社、株式会社HelloNewsを立ち上げ、不動産・建築業界で生きる人々を取材している。

 

賃貸住宅の真ん中の部屋が人気になるかもしれない。

一般的に、集合住宅では「角部屋」が人気だ。開口部が他の部屋より多く、日当たりや見晴らしの良さ、片方の隣人を気にしなくていい解放感、などが理由であることは言うまでもない。

しかし、最近、「中部屋」から埋まりやすくなるのでは?という気になる予測がある。

ちなみに、「中部屋」という言葉は一船的ではないが、ここでは角部屋ではない部屋という意味にする。

「中部屋」人気の理由は、電気代の高騰だ。

昨今、電力需給のひっ迫やウクライナ情勢の影響などで、エネルギーの調達価格が上昇し、大手電力各社が電気代の値上げを実施しているのはよく知られている。

2023年6月からも「従量電灯」(最も一般的な電気料金)について、北海道電力、東北電力、東京電力EP、北陸電力、中国電力、四国電力、沖縄電力が値上げをすると発表。その値上げ幅は、およそ15~39%に上る。

「最近電気代上がったな」と実感している人は多いと思うが、実はそれでもまだ甘い。

というのも、昨年10月28日、政府により電気・ガス料金の負担軽減を含む総合経済対策が発表され、岸田内閣は、「電気・ガス燃料料金・燃油価格の家計負担を軽減するため、来年1月から9月まで4万5千円の家計支援(標準世帯)が実施する」と発表し、今はその最中にいるからだ。

平たくいうと、今、日本国民は電気料金の値上がり分を政府が肩代わりしてくれている状況にいる、ということ。

ちなみに、この肩代わりには、約3.1兆円の税金が投じられている。(経済産業省 令和4年度第2次補正予算)

政府肝入りの家計支援が終わる今年の9月以降、電気代は元に戻るわけだが、10月11月はいわゆる中間期と言われる過ごしやすい時期で、寒冷地以外では極端な暖房使用は少ないと考えられる。

電気代が元に戻っていることを実感しにくい2ヶ月を過ごした後の、12月からが大変だ。

例年通りに暖房を使っていると、「なんてこった!」という明細が届くかもしれない。

気密や断熱などの住宅性能に詳しい、石川組の石川義和社長はこう語る。

「本来であれば、その場しのぎの電気代値下げではなく、住宅の気密性や断熱性をといった住宅性能を高める抜本的な対策に政府は費用を投じるべきでした。仮に5000億円でもいいから断熱改修工事や断熱マンションを建てた方への補助に費用が振り向けられていたら、将来にわたってエネルギーの消費量を減らすことができます。今の政策では、税金を使って目先の電気代が下げただけに過ぎません」

昨年、東京都の小池百合子知事が、自らタートルネックを着用し、重ね着が節電につながるとアピールして話題になったが、その時もその場しのぎの根性論に近いものを感じ驚いたことを思い出した。

と、ここまで説明が長くなったが、「中部屋」に人気が集まるという予測は、両隣を部屋に囲まれている部屋の方が暖かいからである。

特に鉄筋コンクリート造のマンションほど実感できる。

反面角部屋は、外気と接する外皮面積が広いばかりか、開口部も多く、寒さを感じやすい、当然、暖房などの器具に頼らざるを得ない。

「中部屋に住もう!」も、小池知事の「重ね着をしよう!」に近い発想かもしれないが、そんなことでもして少しずつでも暖を取らねばならない状況にある、というのが実態だ。

マイソクに「暖かさを感じやすい中部屋!」という文言を載せてみるのも一つかもしれない。