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コロナ禍で創出された新しい価値

2023.02.09公開

家の中は「見られる」時代に

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、在宅時間の増加、除菌や非対面への意識が高まっていることは言うまでもないが、もうひとつ、大きく変わったことがある。

それは、「他人に家の中を見られる機会が増えたこと」。

こう話すのは、リクルートのSUUMO編集長、池本洋一さんだ。オンラインでの会議や飲み会など、画面越しに自分の部屋が人から見られている。この突如として生まれた変化に対応できている賃貸住宅は、まだほとんどない。

自宅に友人を招いてホームパーティなどを行う欧米諸国と違い、日本では家族以外の人間が部屋を見る、という場面は少なかったと言える。

しかしコロナ禍がそうしたシチュエーションをあちこちに、急速に、生み出した。

「その結果、人におしゃれだと思われる部屋を作る意味合いが強まっています」(池本編集長)

ファッションとしての「部屋の見た目」

例えば、これまでは賃貸住宅で壁紙や床材などのデザインや質感、色にこだわる、という人はそれほど多くはなかった。オーナー側にもそんな意識はほとんどなかった。こうした面材にコストをかけたところで、家賃に反映できる可能性は薄く、モチベーションが湧かなかったからだ。

しかし、部屋が見られる対象となった今、ファッションと同じように住む人の「見た目」や「見られ方」にも影響を及ぼすようになってくると状況は違ってくる。

壁や床を疎かにしないことが、「おしゃれな生き方をしている人」という見られ方につながっていくのだ。

 家賃をアップできる空前のチャンス

「同様に、断熱性能、耐震性、遮音性、日当たり、省エネなどにも関心が高まっています」と、池本編集長は続ける。こうした性能を支える構造体は、通常は壁や床の中の隠れた部分にあって、目には見えないことから、やはりコストを掛けたがらない傾向があった。

しかし家で過ごす時間が増えた今、快適性や安全性に対する意識は大きく変化した。実際、リクルート住まいカンパニーが昨年9月に行った調査「コロナ禍を受けた『住宅購入・建築および賃貸検討者』調査」では、住宅の求める条件で次の事柄が上昇している。

・遮音性に優れた住宅に住みたくなった!
・通風に優れた住宅に住みたくなった!
・省エネ性(冷暖房効率に優れた)住宅に住みたくなった!
・日当たりのよい住宅がほしくなった!

こうした状況を受け、池本編集長は、「オーナーさんにとって、今は家賃をアップできる空前のチャンス」と語る。

ニーズに応えていても付加価値になりづらかったことが、今はしっかりとした価値として評価されるようになった。コロナ禍で生まれた新しい入居者ニーズをいち早く汲み取り、所有物件に反映させていくことが、他物件との差別化につながっていくといえる。オーナーさんには、今こそ新しい生活様式を意識した空室対策で、果敢な家賃アップにチャレンジしてほしいと思う。

※本記事は「武蔵TIMES 令和3年/7月号 vol.087」(発行:武蔵コーポレーション)に掲載された「吉松こころの不動産最前線」に加筆修正を加えたものです。