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コロナ禍でもアクセル全開のシェアビジネス

2023.02.09公開

キーワードは「密室×貸切×非対面」

コロナ禍でさぞや大変な思いをしているだろうと思いきや、活況を呈している業界があった。それは民泊のマーケットだ。キーワードは、「密室×貸切×非対面」だった。

「山中湖や九十九里で稼働率は、78割。淡路島は9割超えています」。こう話すのは大手民泊予約サイトの幹部だ。全国各地で実際の民泊も300棟近く運営している。インバウンド需要が皆無となった37月の経営は厳しかったが、6月上旬ごろから日本人観光客による国内旅行で持ち直したと語る。特に定員10人前後の大部屋が人気で、例えば兄弟や友人同士のふた家族、78人の女子旅といった需要が喚起されたと話す。

「一軒家の民泊であれば貸切となり、他の旅行者と接触することがないのも評価された点のようです」。

また、話題のワーケーションニーズだと思われる宿泊者も増えた。中には134万円の一軒家に30連泊する家族連れもいて、父親は部屋でテレワーク、子供たちは自然の中で大いに遊ぶ、という姿が見られたと話す。宿泊費の総額は数十万円にのぼるが、GO TOキャンペーンの割引対象だったことも好評だった。「民泊は元々合理化や経費削減の面からフロントを設置せず無人でチェックインしてもらう物件が多いのですが、それが非対面ニーズとうまく合致しました」。同社では、今後、投資家を募り新築の民泊を増やす計画だという。「コロナ禍ですが、アクセルは全開です」。

動画配信との親和性が生み出す高需要

民泊と同様に「密室×貸切×非対面」が当てはまり、売上を伸ばす業界がある。レンタルスペースのマーケットだ。今年は「おうちハロウィン」という言葉も生まれたように、例年であれば街中で騒いでいた人々が、ホームパーティーを楽しむというスタイルが定着した。しかもそれを動画配信サイトで生中継するというのが流行らしく、パーティールームを貸し出すレンタルビジネスが大盛況となったのだ。

「ハロウィンのような一時的なイベントに限らず、誕生日会、女子会、家族会といった申し込みも多いです。居酒屋に行くと隣に誰が座るかわかりませんが、レンタルスペースであれば自分で消毒や換気もできますし、何より、密室で貸切というのがウケたよう」。

こう話すのは、レンタルスペース運営会社のマネージャーだ。「自宅だと動画配信時に“生活感”が出たり、家が特定される“家バレ”のリスクがありますが、レンタルスペースではその心配がありません」。

同社によると、飲食店が撤退し空きテナントになっているスペースを居抜きのまま時間単位で借りたい、というニーズも急増したという。結果として、飲食店が退去した後、そのままになっていた物件を稼働させることにつながり、ビル所有者からも喜ばれた。

コロナ禍をバネに急成長する「シェア企業」

両者に共通していえるのは「シェア」という概念だ。総務省の平成27年版「情報通信白書」によれば、「シェアリング・エコノミー」は次のようなものだと説明される。

<(中略)個人が保有する遊休資産(スキルのような無形のものも含む)の貸出しを仲介するサービスであり、貸主は遊休資産の活用による収入、借主は所有することなく利用ができるというメリットがある。貸し借りが成立するためには信頼関係の担保が必要であるが、そのためにソーシャルメディアの特徴である情報交換に基づく緩やかなコミュニティの機能を活用することができる>とあり、市場規模は、2025年には約3,350億ドル規模、日本円にして、335,000億円(1ドル100円換算)に成長する見込みだという。

すでにウーバーやエアビーアンドビーなどが世界的に知られるシェア企業だが、日本国内でもコロナ禍をきっかけにした新しい発想やアイデアが生まれ、ビジネスとして成長を遂げている。

※本記事は「武蔵TIMES 令和3年/1月号 vol.081」(発行:武蔵コーポレーション)に掲載された「吉松こころの不動産最前線」に加筆修正を加えたものです。