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路線価否定を巡る裁判がついに決着!いきすぎた節税スキームに国税当局が「待った!」

2022.07.07公開

 

追徴課税は3億円

2022年4月19日、ついに3年に及んだ不動産取得を利用した節税スキームの是非を問う裁判に決着がついた。

最高裁は、国税当局が相続人に対して追徴課税した処分を「適法」とし、一審、二審の判決同様に相続人側の上告を棄却した。つまり、路線価を基にした計算が、市場価格と比べて低すぎる場合は、不動産鑑定士による鑑定評価額をもとに計算することが認められたということだ。

これにより、上告人である相続人には、追徴課税3億円の支払いが求められることになった。

今回は、本裁判の経緯について改めて振り返りたい。

裁判の概要
原告(上告人):相続人Aさん
被告(被上告人):国税当局(税務署長)
<事案の概要>
Aさん(相続人)が相続財産の価額を財産評価基本通達の定める方法(路線価による評価)により相続税の申告をしたところ、税務当局から不動産の一部の価額が上記通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められることから、鑑定評価額を用いた評価をすべきであるとした。それに対しAさんは異議を唱え、国税当局を相手に、その取消しを求めた事案 
今後の節税スキームに影響を及ぼす判決に

ことの発端は、Aさん(原告)の祖父(89歳)が、自身が死亡した際、多額の相続税が発生するのを知ったことだ。そこで祖父は、孫であるAさんを養子にした後、借金をしてアパート2棟を約14億円で購入。祖父の死後、Aさんはそれらを相続しましたが、相続税の申告前にアパートを1棟売却した。

相続税について、Aさんは一般的な評価方法である路線価を用いて、相続財産を約33000万円と評価し、銀行からの借り入れ等による控除を適用して相続税額を0円と申告した。しかしそこで、国税当局がその計算方法に「待った!」をかけたのだ。

国税当局は、Aさんが祖父の養子となり相続税額を圧縮したこと、相続後すぐにアパートを1棟売却したことなど、不動産の取得を投資活動の一環としていることを理由に、これまで当然とされていた路線価による評価ではなく、鑑定評価額(約13億円)を適用した。そのため、追徴課税としておよそ3億円をAさんに求めたが、これにAさんは反発。Aさんは課税処分の取り消しを求めて訴訟を行ったのだ。

結果、2019年8月に行われた東京地方裁判所による判決で、裁判所は「不動産の取引価格と路線価評価の乖離を利用し、節税のみを目的とした一連の不動産売買である」と判断。「路線価以外の合理的な方法として不動産鑑定士による金額での再計算」と結論づけた。その後、2020年6月に行われた東京高等裁判所による二審でもその判断が維持されていた。

今回行われた最高裁判所での裁判の行方に注目が集まったが、国税当局が勝訴したことで、今後も不動産の取得や養子縁組など、節税を目的とした節税スキームが明らかだった場合は、国税局が「待った!」をかけることも出てくるかもしれない。

路線価と市場価格が乖離した不動産を相続する場合は、市場価格による相続税評価額の算出を求められるケースも出てくるだろう。節税を目的とした不動産投資にも影響を及ぼす可能性がある。