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【Vol.6】吉松こころの Go There,Be There「空室が消えた?!」

2023.06.07公開

<著者プロフィール>
暮らしジャーナリスト・吉松こころ
1977年鹿児島県伊佐市(旧大口市)生まれ。 全国賃貸住宅新聞社に勤務。取締役を経て、2015年に独立。 不動産業界向けのミニ通信社、株式会社HelloNewsを立ち上げ、不動産・建築業界で生きる人々を取材している。

 

この繁忙期、都内の1LDK、2LDKは、情報が出た瞬間、内見が決まるという状態が続いたそうだ。

「レインズが始まる7時からチェックしています。午前中に空き予定が出ると、午後には埋まるスピードです」。

月に、30人の内見案内をし、賃貸仲介だけでアベレージ300万円を売り上げる誠不動産(東京都)の鈴木誠社長は話す。

 そういえば、愛知県で250戸の賃貸マンションを所有する村瀬裕治さんも言っていた。

「世の中から空室が消えた!」と。

村瀬さんが、愛知県豊明市の丘下で所有する54戸の賃貸マンションは、築29年を超えている。家賃は数年前まで5万5000円だったが、ここ2年くらいで、退去があるたびに値上がりし、6万5000円、7万円とアップ。ついにこの繁忙期には7万5000円になったと話す。 

「以前は一度退去があると次の入居者獲得に苦戦していただけに、驚いています。

特に大きな空室対策をしたわけではないので、市況が変わったとしか思えません」。

村瀬さんは、市況の変化について、2つのことを挙げている。

一つが引越し代の高騰で、もう一つが競合になる新築が建っていないのではないか、ということだ。

前者は、人手不足やガソリン代の高騰からくるもので、入退去が重なる時期は、特に高くなる。

後者については、村瀬さん自身も体感済みで、昨年検討していた新築物件の見積もりが、たった1年で1億円アップになったそうだ。「これだけ急激に上がると断念せざるを得ません」。

私が今まで聞いた中で一番値上がりが大きかった案件は、最初8億円だった建築費が、わずか1年で11億5000万円まで値上がりしたという鹿児島の事例。種子島で離島という環境下ではあったが、35000万円の値上がりは想定になかった。

「周辺地域には空室が一部屋もない状況で、教職員の入居で全室内定していましたが、この建築費を前に建築は断念しました。新築時は良くても十数年単位で考えたら採算に合わない」(建築主)

地域差は当然あるが、「なかなか埋まらない部屋」がある大家さんは、宣伝を工夫すれば今は埋めどきかもしれない。