• Top
  • 記事
  • 【第2回】不動産の相続税はいくら?

記事記事

【第2回】不動産の相続税はいくら?

不動産の相続税評価額を算出する方法

相続財産の評価額は、被相続人が亡くなった時点での時価に基づくのが原則です。
この評価方法は、国税庁の「財産評価基本通達」に定められており、基本的にはこの通達上のルールに従って評価額を算出します。
ただし、不動産、特に土地は、有価証券のように価格がはっきりと分からない財産のため、財産評価基本通達に基づいて評価を行ったとしても、原則である時価を反映しきれないことがあるため注意が必要です。

ここでは、不動産の相続税評価額の計算方法について、詳しく解説します。

路線価方式か倍率方式で算出する

路線価が定められている地域の土地の相続税評価額は、原則として路線価方式で算出します。
路線価とは、路線(道路)に面する標準的な宅地の1㎡あたりの価額のことで、国税庁のホームページや全国地価マップで確認できます。
路線価方式は、路線価にその土地の形状等に応じた奥行価格補正率などの各種補正率で補正したあとに、その土地の面積を乗じて計算することができます。

路線価が設定されていない場合、倍率方式で評価を行います。
倍率方式とは、不動産の固定資産税評価額に国税庁が定めた評価倍率表の倍率をかけて相続税評価額を算出する方法です。
土地の利用形態はさまざまな種類があり、全国の土地の区分けを均等に行うのは難しく、土地の利用頻度が比較的低い地方や郊外の地域は、倍率方式によって評価をすることが多いです。

路線価方式と倍率方式の違いや、土地評価で気を付けるべき点について詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。

 

路線価方式で土地の相続税評価額を算出する
路線価方式で土地の相続税評価額を算出する方法は、おおむね次の5つのステップに分けられます。

・路線価方式で土地の相続税評価額を算出する方法
 1.国税庁ホームページから「路線価・評価倍率表」にアクセスする
 2.土地の所在地を入力して地域を絞り込む
 3.表示された路線価図から1㎡あたりの単価(路線価)と地区区分を確認する
 4.できるだけ詳細な土地の図面(縮尺も正確)を使用して、各種補正率を算定する
 5.次の計算式を用いて土地の相続税評価額を算出する

・路線価方式で土地の相続税評価額を算出するための計算式
 土地の相続税評価額=相続税評価額×各種補正率×土地面積

路線価は、道路に面する「1㎡あたりの標準的な宅地の価格」のことを指し、千円単位で示されます。
路線上に100とある場合、路線価は1㎡あたり10万円です。
地区区分は路線のある地区名で、路線価の補正率を調べる際に必要です。
路線価の補正率は、奥行価格補正率や側方路線影響加算率などの種類があります。
例えば、補正が必要ない土地の路線価が10万円、面積が100㎡の場合、計算式は以下のとおりです。

10万円×100㎡=1,000万円
この土地の相続税評価額は、1,000万円になります。

倍率方式で土地の相続税評価額を算出する

国税庁の「路線価図・評価倍率表」に路線価が表示されていない土地を相続する場合は、倍率方式で相続税評価額を算出します。
土地の相続税評価額を倍率方式で算出する方法は、次のとおりです。

・土地の相続税評価額を倍率方式で算出する方法
 1.国税庁のホームページから「路線価図・評価倍率表」にアクセスする
 2. 土地の所在地を入力して地域を絞り込む
 3. 画面上部の「この市区町村の評価倍率表を見る」を開く
 4. 土地がある地域の評価倍率を確認する
 5. 次の計算式を用いて相続税評価額を算出する

・倍率方式で土地の相続税評価額を算出するための計算式
 土地の相続税評価額=固定資産税評価額×評価倍率

固定資産税評価額は、毎年市区町村から土地の所有者宛に郵送される固定資産税納税通知書等で確認できます。評価倍率は宅地や田、畑など土地の利用用途ごとに異なる倍率が設定されているため、相続を受ける土地の種類に応じた倍率を確認します。
例えば、固定資産税評価額が2,500万円で、評価倍率が1.1だった場合の計算式は、次のとおりです。

・2,500万円×1.1=2,750万円

上記の計算により、土地の相続税評価額は、2,750万円になります。

土地の評価額を適正に補正する

いびつな形状や間口が狭いなど使い勝手が良くない土地を相続した場合、土地の評価を減額できる可能性があります。例えば、路線価×土地の面積で算出された相続税評価額は画地調整されておらず、実際の土地より過大評価されているケースも少なくありません。
適正な評価をするには、画地調整ができる土地の種類を理解して、ご自身が相続する土地にあてはまるかどうかを確認することが必要です。
補正できるケースはさまざまですが、一例として以下があげられます。

・土地の相続税評価で使用する減額補正の例
 ・奥行価格補正(その地域の標準的な土地よりも奥行きが短い、または長い土地が減額される)
 ・側方路線影響加算(正面と側面が2つの道路に面する土地に加算される)
 ・不整形地補正(いびつな形状の土地が減額される)
 ・間口狭小補正(その地域の標準的な土地よりも間口が狭い土地が減額される)
 ・特別警戒区域補正(土砂災害特別警戒区域内にある土地が減額される)
 

また、土地のひょうかが下がりやすい土地の具体的な例は、以下のとおりです。

・評価が下がりやすい土地の例
 ・住居、店舗、畑、駐車場など、さまざまな用途に使用されている土地
 ・私道として使用されている土地
 ・賃貸アパートや貸家などの敷地
 ・高圧線や地下鉄などが通っている土地
 ・線路が近くにあるなどの理由で、騒音や振動がある土地

上記のような土地を適正に評価すれば、いくらかは相続税を抑えることができますが、さらに重要なのは相続税評価を行う際に時価の観点を持って評価を行うことです。
すなわち、財産評価基本通達に基づく評価額を時価の観点から客観的・批判的に見て評価を行うということです。例えば、土地の時価(売却できる価格)を把握して評価を行うと、その評価額に近づけるために、さまざまな評価手法を検討しながら適正な評価を行うことができます。
財産評価基本通達に基づく評価額と時価に大きな違いがある場合には、不動産鑑定評価を適用して評価を行うことも可能です。

このように相続税評価額の算出には経験とノウハウが必要になる場合があるため、個性のある土地や金額の大きい土地を所有されている方は、不動産に強い相続専門税理士事務所への相談をおすすめします。

家屋の相続は固定資産税評価額となる

家屋を相続した場合の建物の相続税評価額は、固定資産税評価額に1.0を乗じて評価を行います。
建物の固定資産税評価額を確認するには、被相続人宛に届く固定資産税納税通知書等を確認しましょう。
固定資産税評価額は、固定資産税納税通知書の価格の欄に記載されている金額です。
土地と家屋ごとに項目が分かれているため、相続を受けた家屋に記載されている価格を確認します。

固定資産税納税通知書は、毎年1月1日時点で不動産の登記をしている人を対象に市区町村から送付されます。
送付時期は市区町村によって異なりますが、毎年4月から6月頃に届くことが一般的です。
固定資産税納税通知書が見つからない場合は、市区町村役場に問い合わせをして固定資産税評価証明書を発行してもらいましょう。
または、市区町村役場で保管されている固定資産課税台帳で調べることも可能です。

マンション一室の相続税土地評価はマンション敷地全体の評価額×敷地権割合

マンション一室の相続税評価額を算出する際は、建物と土地に分けて算定し、合算します。

自己の居住の用に供されているマンション一室の土地の評価額は、当該マンション敷地全体の評価額に敷地権割合を乗じて評価を行います。
但し、2024年1月1日以降の相続では、区分所有補正率を乗じて算定します。

・マンションの敷地部分の相続税評価額
 土地の評価額=マンションの敷地全体の評価額×敷地権割合×区分所有補正率(2024年1月1日以降の相続)

敷地権割合は、登記事項証明書もしくは売買の契約書を確認してみてください。

区分所有補正率は、複雑で説明が長くなるため、今回は詳細な説明は省かせていただきます。
詳細を知りたい方は、国税庁の資料で確認できます。

自己の居住の用に供されているマンション一室の建物の評価額は、前述の通り固定資産税評価額に1.0を乗じて評価を行います。
但し、2024年1月1日以降の相続では、区分所有補正率を乗じて算定します。

・マンションの建物部分の相続税評価額
 建物の評価額=固定資産税評価額×1.0×区分所有補正率(2024年1月1日以降の相続)

■賃貸の用に供されている建物及びその敷地の相続税評価

賃貸の用に供されている建物が建っている土地は「貸家建付地」と呼ばれ、借家人がいることで所有者の利用が制限されることによる減価を反映します。

具体的な計算式は、次のとおりです。

・賃貸の用に供されている建物の敷地部分(貸家建付地)の相続税評価額
 土地の評価額=自用地評価×{1-(借地権割合×借家権割合×賃貸割合)}

自用地評価には、路線価方式または倍率方式で算出した土地の相続税評価額をあてはめます。
借地権割合は、国税庁の「路線価図・評価倍率表」で調べた路線上に表示されたアルファベットによって、割合が定められています。

・路線価図上のアルファベットと借地権割合
 ・A(90%)
 ・B(80%)
 ・C(70%)
 ・D(60%)
 ・E(50%)
 ・F(40%)
 ・G(30%)

路線上に「●●●E」と表示されている場合は、借地権割合は50%になります。
借家権割合は入居者が建物の一部を借りる権利を数値化した割合で、全国一律30%です。
賃貸割合は入居率のことで、賃貸している部屋数ではなく床面積の割合で示されます。
例えば、床面積の合計が100㎡の賃貸物件で、22.5㎡のの空室が2つある場合、賃貸割合は55%となります。

建物の評価額は、固定資産税納税通知書または固定資産税評価証明書で確認しましょう。

⇛第3回に続く

執筆者

左:フジ総合グループ代表 藤宮 浩氏  不動産鑑定士/相続税還付業務の第一人者として、テレビ、雑誌、新聞など、各種媒体への出演、寄稿を行なう。
右:フジ総合グループ副代表 髙原 誠氏  不動産に強い相続専門事務所の代表税理士として、年間約990件の相続税申告・減額・還付案件に携わる。

参考:フジ相続税理士法人  https://fuji-sogo.com/